戒名とは?
戒名(かいみょう)というと、亡くなったときにお寺から授けてもらう名前、というイメージを持っている方も多いと思います。
しかし、本来の戒名は、亡くなった人につける名前ではありません。
戒名とは、仏の教えに帰依し、仏教徒として守るべき「戒」を受けた人に授けられる名前です。
では、この「戒」とは何なのでしょうか。
戒とは?
戒(かい)とは、仏教を信仰する人が守るべき規則(ルール)のことです。
仏教では、仏の教えを信じるだけではなく、その教えにしたがって日々の生活を送ることが大切だと考えられています。
そのため、仏教徒としてどのように生きるべきかを示した、さまざまな戒が定められてきました。
そして、この戒を受ける儀式を「授戒(じゅかい)」といいます。
授戒を受け、仏の教えにしたがって生きていくことを誓った人に授けられる名前が、本来の戒名なのです。
戒名は本来、生前に授かるもの
現在では、葬儀の際に菩提寺の住職から故人に戒名を授けてもらうことが多いため、「戒名は亡くなってからつけるもの」と思われがちです。
しかし、戒名は本来、生きているうちに授戒を受けて授かるものです。
天台宗では、在家(僧侶でない人)・出家(僧侶)を問わず、仏教に入信するときに授戒の儀式を受け、戒名を授かることができます。
授戒とは、ただ新しい名前をもらうための儀式ではありません。
自分自身も仏の道を歩む者であることを自覚し、仏の教えにしたがって生きていくことを心に誓う儀式でもあります。
そのため、戒名は「死後の名前」というよりも、本来は仏教徒として生きていくための名前と考えたほうが、その意味を理解しやすいでしょう。
つまり、戒名は亡くなってから初めて必要になるものではなく、本来の意味からいえば、生前に授かっておくことが望ましいものなのです。
天台宗の戒とは?
仏教の戒にはさまざまなものがありますが、天台宗では、仏・法・僧の三宝(3つの宝)に帰依し、「三聚浄戒(さんじゅじょうかい)」を守ることを重視します。「聚」とは、「あつまり」という意味です。
三宝とは、
- 仏――すべての仏
- 法――お釈迦さまが説かれた教え
- 僧――仏の教えにしたがって修行する僧侶
のことです。
そして、天台宗では三聚浄戒を「大乗菩薩戒」といい、仏教徒として生きていくうえで大切な戒としています。
「菩薩」とは、仏に成ることを目指して修行する人のことです。僧侶だけを指す言葉ではなく、在家の仏教徒も菩薩として仏の道を歩むことができます
三聚浄戒とは?
三聚浄戒(さんじゅじょうかい)とは、大きく三つにまとめられた戒のことです。
一つ目は、摂律儀戒(しょうりつぎかい)です。
すべての戒を守り、身を慎んで、悪いことをしないという戒です。
二つ目は、摂善法戒(しょうぜんぼうかい)です。
さまざまな善い行いを実践し、修養に努めて、自分自身をよりよい人間へと高めていくという戒です。
三つ目は、摂衆生戒(しょうしゅじょうかい)です。
自分のためだけではなく、すべての人々のために力を尽くすという戒です。
簡単にいえば、
- 悪いことをしない。
- 善いことをする。
- 人々のために尽くす。
という三つですね。
天台宗を開いた伝教大師最澄は、日本の人々はみな菩薩であり、その守るべき戒は円頓菩薩戒(えんどんぼさつかい)であると説きました。
こうした戒を受け、「自分も菩薩として仏の教えにしたがって生きていく」と誓った人に授けられる名前が、戒名なのです。
戒名の構成

戒名は、いくつかの部分を組み合わせてつけられています。
一般的な位牌を見ると、
「○○院 ○○ ○○ 居士 霊位」
といった文字が並んでいます。
これらはすべてをまとめて「戒名」と呼ばれることもありますが、厳密には、それぞれに名称と意味があります。
図のように、次の5つに分けることができます。
① 院号(いんごう)
② 道号(どうごう)
③ 戒名(かいみょう)
④ 位号(いごう)
⑤ 置字(おきじ)
では、それぞれどのような意味があるのでしょうか。
院号とは?
院号(いんごう)は、戒名の一番上につけられる「○○院」の部分です。
院号は、古くは貴人など、限られた人にのみ冠されたものでした。
現在では戒名の一部として見かけることも多いですが、すべての戒名に院号がつくわけではありません。
道号と戒名
院号に続く「○○」が道号(どうごう)、その次の「○○」が本来の意味での戒名です。
道号と戒名には、その人の生前の徳や性格など、その人の一生を表すのにふさわしい言葉が選ばれます。
つまり、位牌に書かれた長い名前のすべてが厳密な意味での「戒名」なのではなく、戒名そのものはその一部分なのです。
位号とは?
戒名の下につけられる「居士」「大姉」「信士」「信女」などを位号(いごう)といいます。
位号は、年齢や性別、信仰のあり方などによってつけられるものです。
よく目にする「居士」や「大姉」も、実は戒名そのものではなく、この「位号」にあたります。
| 位号 | 読み | 一般的な対象 |
|---|---|---|
| 居士 | こじ | 成人男性 |
| 大姉 | だいし | 成人女性 |
| 信士 | しんじ | 成人男性 |
| 信女 | しんにょ | 成人女性 |
| 童子 | どうじ | 男児 |
| 童女 | どうにょ | 女児 |
| 孩児 | がいじ | 幼い男児 |
| 孩女 | がいにょ | 幼い女児 |
| 嬰児 | えいじ | 乳児 |
| 嬰女 | えいにょ | 乳児の女児 |
なお、位号のつけ方には寺院や宗派、地域などによって違いがあります。
置字とは?
さらに、その下につけられる「霊位」などを置字(おきじ)といいます。
位牌の一番下に添えられる文字で、「下文字(したもじ)」とも呼ばれます。
このように、普段ひとまとめに「戒名」と呼んでいる名前も、実際には院号・道号・戒名・位号・置字といういくつかの要素から成り立っているのです。


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