お布施とは?
お布施(おふせ)というと、「葬儀や法事のときに僧侶へ渡すお金」というイメージを持っている方も多いと思います。
しかし、本来の「布施」は、僧侶への謝礼だけを意味する言葉ではありません。
布施は、仏教における大切な実践の一つです。
葬儀で僧侶にお渡しするお布施も、この仏教本来の「布施」という考え方にもとづいています。
「布施」とは?
「布施」という言葉は、サンスクリット語の dāna(ダーナ) に由来します。
dāna とは、基本的に「与えること(the act of giving)」「贈与・施し(donation, gift)」を意味する言葉です。
布施とは、人に何かを与えること、施すことです。ただし、金銭や品物を与えることだけが布施ではありません。人に親切にすることも布施に含まれます。
ちなみに、お寺との関係で使われる「檀家(だんか)」や「檀那寺(だんなでら)」の「檀那」も、この dāna(ダーナ) に由来します。
「檀那」は、dāna(ダーナ)という音を漢字で表した音写(おんしゃ/音をそのまま写す)です。つまり、「檀」や「那」という漢字そのものの意味からできた言葉ではなく、
dāna(ダーナ) → 檀那(だんな)
と、その音に漢字を当てたものです。
そこから、寺院や僧侶に布施をする人を「檀那」、その家を「檀家」、檀家が所属する寺院を「檀那寺」と呼ぶようになりました。
このように、仏教における布施とは単に「お金を渡すこと」ではなく、自分のできることを他者のために施すことと考えると分かりやすいでしょう。
布施には三つある
布施にはさまざまな分類があります。そのなかの一つに、法施(ほうせ)・財施(ざいせ)・無畏施(むいせ)という「三施(さんせ)」の分類があります。
葬儀や法事でいう「お布施」の意味を理解するうえでも、この三施を知っておくと分かりやすいでしょう。
法施とは?
法施(ほうせ)とは、人のために仏の教えを説き、真理を理解できるようにすることです。
金銭や品物を与えるのではなく、仏の教えを伝えることそのものを「施し」と考えます。
葬儀や法事において、僧侶が仏法を説き、故人や遺族のために仏事を営むことも、この法施として捉えられます。
財施とは?
財施(ざいせ)とは、財物を他者に施すことです。
金銭や品物など、自分の持っているものを人のために与えることが財施にあたります。
葬儀や法事では、僧侶から法施を受け、そのことへの感謝として施主が金銭をお渡しします。一般に「お布施」と呼ばれているものは、この財施にあたります。
つまり、葬儀のお布施は単純に「読経の料金を支払う」というものではなく、
僧侶から「法施」を受け、それに対して施主が「財施」で応える
という関係として捉えることが大切です。
無畏施とは?
無畏施(むいせ)とは、人々の不安や恐れを取り除き、安心を与えることです。
「畏(おそ)れを無くす施し」という文字どおり、恐れや不安を抱えている人に安心を与えることをいいます。
悲しんでいる人に寄り添う、困っている人を助ける、不安を抱えている人に優しい言葉をかける――こうした行いも、無畏施の考え方につながります。
このように、布施には仏の教えを伝える「法施」、財物を与える「財施」、安心を与える「無畏施」があります。
「布施」というとお金を思い浮かべがちですが、本来はそれだけではありません。自分の持っている財物、教え、安心を他者に与えることまで含んだ、仏教の実践なのです。
お布施の包み方
お布施は、そのまま現金を手渡すのではなく、半紙などでお札を包み、仏事用の封筒に入れるのが正式な包み方とされています。
市販されている仏事用の封筒を使用してもかまいませんが、お札をむき出しのまま入れるのではなく、半紙などで一度包んでから入れます。
表書きは「御布施」
封筒の表書きには、中央上部に「御布施」と書き、その下に喪主の名前を書きます。
本来は毛筆で書くのが丁寧ですが、筆がない場合には筆ペンやフェルトペンなどを使ってもかまいません。
なお、お布施は僧侶に対するお悔やみではありません。そのため、香典のように薄墨で書く必要はありません。
水引の色は?葬儀は黒白、法事は黄白
お布施の水引については、葬儀の際には黒白、法事の際には黄白の水引を用いるとされています。
ただし、水引の色や、お布施に水引をかけるかどうかについては、地域や寺院によって習慣が異なります。
そのため、迷った場合には菩提寺や葬儀社に確認するとよいでしょう。特に法事で使われる黄白の水引は、関西をはじめとする地域でよく見られる仏事の習慣です。
お布施の渡し方

お布施は、葬儀や法事で僧侶にお経を読んでもらったことへの「料金」として手渡すものではありません。
先ほど紹介したように、僧侶から受けた「法施」に対して、感謝の意を示すものです。そのため、本来は葬儀が終わったあと、喪主がお寺へ出向いてお布施をお渡しするのが正式な形とされてきました。
お布施はいつ渡す?
本来は、葬儀の翌日に喪主がお寺を訪れ、お布施をお渡しします。
しかし現在では、葬儀当日に僧侶へお渡しすることも一般的です。僧侶が火葬場まで同行する場合には、火葬を終えて還骨回向を行ったあとに渡すこともあります。
葬儀当日に渡す場合には、僧侶が帰る際などに、葬儀を務めていただいたことへのお礼とともにお渡しするとよいでしょう。
お布施を渡すのは、基本的には喪主、または遺族の代表者です。
手渡しではなくお盆にのせる
お布施は、封筒を僧侶の手に直接渡すのではなく、小さなお盆にのせて差し出すのが丁寧な渡し方です。
このときに使われるのが「切手盆(きってぼん)」と呼ばれる小さなお盆です。
お布施を切手盆にのせ、「御布施」の文字の上側が僧侶の方を向くようにして差し出します。
切手盆がない場合には、普通のお盆を使用してもかまいません。
大切なのは、単にお金を手渡すのではなく、仏事を務めていただいたことへの感謝として、丁寧にお渡しすることです。
香典返しとは?
香典返し(こうでんがえし)とは、葬儀の際にいただいた香典に対して、故人に代わって感謝の気持ちを込めてお返しをすることです。
香典は、故人の冥福を祈って供えるものであると同時に、遺族を助けるという意味も持っています。
その心遣いに対して、遺族がお礼の品を贈るのが「香典返し」です。
香典には「相互扶助」の意味もある
香典には、故人の冥福を祈るという宗教的な意味だけではなく、遺族を経済的に助ける「相互扶助」の意味もあります。
葬儀にはさまざまな費用がかかります。そこで、親族や知人などがお金を持ち寄り、遺族を支えるという役割も香典にはありました。
以前の記事でも紹介したように、「香典」はもともと香を供えることに由来します。香を持参する代わりに、香を購入するためのお金を供えるようになったとも考えられています。
このように香典には、故人への供養と、残された遺族を助けるという二つの側面があるのです。
香典返しはいつする?
香典返しは一般的に、四十九日の忌明けを迎えてから行います。
四十九日までの期間は「中陰(ちゅういん)」と呼ばれ、遺族は故人の供養を続けます。その期間を終えたことを報告するとともに、香典をいただいた方へお礼の品を贈ります。
香典返しには、品物だけでなく、無事に四十九日の法要を終えたことを伝える挨拶状を添えるのが丁寧です。
「半返し」とは?
香典返しでは、昔から「半返し」という言葉が使われます。
これは、いただいた香典の金額に対して、およそ半額程度の品物をお返しするという考え方です。
たとえば、1万円の香典をいただいた場合には、5,000円程度の品物をお返しするというのが一つの目安になります。
ただし、必ず半額を返さなければならないという決まりではありません。
香典は本来、故人への供養や遺族を助けるために贈られるものです。そのため、「半返し」という金額にあまり厳密にこだわる必要はありません。


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